2023/12/24 2024/01/30
【笑いのエビデンス】「笑いと治癒力」①/6(ノーマン・カズンズ)
「笑いと治癒力」(ノーマン・カズンズ)
これから「笑いの効用」についての実験やその結果について、少しずつ皆さんにご紹介して行こうと思います。先ず第一弾は表題にある「笑いの治癒力」です。著者のノーマン・カズンズは米国ニュージャーシー生まれのジャーナリストです。米国有数の書評・評論誌「サタデー・レビュー」の編集長を30年務めた後、カリフォルニア大学医学部・大脳研究所教授となりました。自らの難病に立ち向かいそれを克服した闘病記とも言える書籍ですが、当時の医学界に激震を与える内容でその後の「精神免疫学」のパイオニアとも言われる存在となりました。約60年も前の出来事ですが今でもビックリするほど心に訴えかけてくる何かがあります。
①「私の膠原病回復記」
ノーマン・カズンズは、1964年に重症の膠原病の一種である強直性脊椎炎にかかりました。手足を動かすのも不自由でベット上で寝返りを打つのも難しい状況でした。当時500人に1人しか全快しないと言われていた難病です。書評・評論誌の編集長であり医学の知識も多少持ち合わせていた彼は、自分の身体に起きたことの原因と対策を自分なりに科学的に仮説・分析しました。主治医であり友人でもあるヒッツィグ博士にも相談のうえ、医者と二人三脚で治療に挑戦することにしました。
原因は排ガスアレルギーを持っていたところに、超多忙のため副腎が超疲労状態となり免疫機能が落ちていたため身体が耐えきれなかったものと推定しました。彼はストレス学の父と言われるハンス・セリエの「生命のストレス」を読んだことを思い出しました。ネガティブな情緒が人体の化学的作用にネガティブの効果を及ぼすというものでした。(今では当たり前にみんな知っていることですが)逆も真なのではないかとカズンズは考えました。愛や希望や笑いなどの積極的な情緒が人体の化学的作用にポジティブな効果を引き起こす可能性があるのではないかと。
もう一つは薬です。彼は鎮痛剤の薬漬けになっていたのです。鎮痛剤も副腎に重い負担をかけることを調べ上げました。さらに、医学誌などを調べ、鎮痛剤をやめた場合に炎症に対処するには、ビタミンCが効くのではないかとの仮説を立てました。カズンズは、ヒッツィグ博士に自分が考えたことを相談し、支持を得たうえで2つの治療に挑戦しました。「笑い」と「ビタミンCの大量投与」です。
「笑い」は滑稽な映画やドッキリカメラを見て大笑いすることです。「ビタミンCの大量投与」はビタミン注射では余分量は吸収されずに排泄される虞があることから4時間かけてゆっくり大量投与するというものでした。「笑い」の効果はてきめんで「10分間腹を抱えて笑うと、少なくとも2時間は痛みを感ぜずに眠れる」というものでした。「ビタミンCの大量投与」も10gから徐々に25gまで増やしていき、投薬前後で血沈を測定したところ明らかな低下(改善)が見られました。両方の対策を初めて1週間で薬や睡眠薬とは完全に縁を切り、無痛で自然の快眠の時間が長くなっていき、8日目には手の親指を動かしても痛みを感じないほどに回復しました。それからあっという間に全快したと言うわけではありませんが、数ヶ月後には1日中働けるだけに回復しました。その後も年々回復して行ったのです。
次回は「神秘的なプラシーボ」です。